突然手持ちの本がなくなって、
収納をガサゴソとしてみたら、運良くまだ未読の本が一冊出てきました。
よしもとばななさんの「哀しい予感」。
比較的初期の作品です。
この作家の作品を読むたびに思うのだけれど、
こんなにきれいな言葉遣いの人ばっかりじゃないですよね。
たぶん、僕が日常生活でこんな風に話したら
「どうしたの?」って顔で見られてしまう。
けれど、近しい人の死と、サイキックな能力と、
許されない恋心と、裏切られてしまう切ない善意のスパイスをかけられると、
不思議なくらいそれぞれの言葉は力強く輝くのです。
お風呂の湯船に身を浸けて、
そのまま栓を抜いてみる。
ジャージャーとお湯が抜けきって
いざ立ち上がろうとしたそのときに感じる自分の重さ、重力の呪い。
きっとそれくらいの生々しさで、どうしようもなさで、
彼女の物語の登場人物たちは恋に落ちるその瞬間を目に焼き付けようとします。
この熱情の先にあるのは大抵の場合めんどくさいものばかりだけれど、
私が欲しいのはこの人だけでいい。そんな風に思えてしまう瞬間は確かにある。
なんだか優しい両親がかわいそうだったけれど、
まっすぐに、そう、私は恋に落ちた。
こんな文章がスラスラと思いつきで書けるくらい。
彼女のテクストたちはパワフル。
「哀しい予感」。もしよろしければ是非。
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