ソメイヨシノが満開ですね。
小学校のときの国語の教科書にあった
桜に関わるお話を今でも覚えています。
桜が咲くのは1年の間で約2週間だけ。
でも、ある人から見れば実はそうではないのだそうです。
「ある人」とは草木染めの職人さん。
彼は桜の美しいピンク色を生地に染め込みますが、
その材料は花ではなく、皮の方。
さて、最も美しい発色で生地を染めるのは
いつの時期の桜の皮か。
それは、桜の花が咲く少し前なのだそうです。
職人さんは真冬の時期から定期的に桜の皮を採取して、
染めのテストを何度も行いました。
その結果、まだ雪が降る時期からピンク色の発色は始まり、
桜の開花直前に最も美しい色を生み出す事を知ったのだそうです。
つまり、僕らの目には見えない桜の木の内部は、
段々と色づいていたという事。
桜の開花は奇跡のような突然さで訪れるのではなく、
真冬の時から次第にその体を色づかせて、
ついに迎えた長い時を超えての一瞬だという事。
たった2週間の時期だけ、僕らは桜を見上げます。
けれど桜は一瞬のきらめきのために、長い冬に力を溜め続けているのです。
この事実を知るだけで、きっとソメイヨシノは一層美しく見えるはず。
さて、今夜のお話は、実は営業の方法論につながります。
アーティストの村上隆さんは、「日本のアートに足りないものは
きちんとコンセプトを伝える営業努力だ」を言いました。
アーティストも作品が売れてナンボなのに、
日本のアーティストたちは「金のためにやってるんじゃない」と
格好をつけて、まともなプレゼンをしようとしないと。
アートに対するこの考え方があっているかどうかは判断できないけれど、
こと「売る」ということに対しては100%賛成です。
もし僕が桜を売るのなら、必ずさっきの草木染め職人の話をします。
桜は十分にきれいかもしれないけれど、その背景に長い冬の時間を見せれば、
桜の美しさは価値をもっともっと高められる。
デザイン会社につとめていると、これはとても重要なことです。
かっこいい、かわいいだけでは伝わりません。
そこに「なぜ」が必要です。
何かを「かっこいい」と「面白い」と思う。
けれど意外に自分でも「なぜ」かっこいいと思うか、
面白いと思うかはわからないものです。
それを考えて、きちんとストーリーにして相手に伝えれば、
「かっこいい」や「面白い」はより強くなります。
僕は「なぜ」かを一生懸命考えます。
だって自分がよいと思えるものが相手に伝わらないのは哀しい。
そして、もっと言えば、その「なぜ」は優れたデザインへたどり着くための道筋で、
それはデザインの「ネタ」にほかならないから。
つまり、良いデザインがあって、そこから理由を考えるのではなく、
次はその理由をたよりに良いデザインが作り出せるようになるはず。
長くなりましたが、ソメイヨシノから始まった連想ゲーム、終了です。
少し無粋な話になりましたが、
この桜の頃にみなさんがやすらかな眠りにつけますように。
おやすみなさい。
最近のコメント