地軸の先、北極星の下、極寒の大地の空気には不純物はない。
音を遮るものもない。
だから、北極では雲がちぎれる音を聞く事ができる。
そんな風に言ったのは、あるテレビタレントの父だ。
そして、世界中を音楽を中心に考えてみれば、
世界で一番美しい生き物は白熊だ。
なぜなら、彼らは雲がちぎれる音を聞いて暮らすから。
雲がちぎれる音はこの世で一番美しい音だから。
もちろん、渡り鳥やアザラシだって、その音を聞くけれど、
彼らはいつも何かに怯えて暮らすから美しくはない。
白熊に天敵はいない。だから彼らは世界で一番美しい音に
ゆっくりと耳を傾けられる唯一の動物ということになる。
僕らは二足歩行を覚えて、火を操れるようになって、
地球を支配する事ができたけれど、少しもったいなく思うのだ。
サバンナを全力で駆けても決して転ばないインパラ、
砂漠を散歩できるラクダ、雲のちぎれる音を聞く白熊。
「僕らはその代わりに、
白熊を世界で一番美しいと思える想像力を手に入れたんだ」
そんな風に強がってみても、この大地と完全にシンクロした
それらの美しさはすべて、僕らが遠い昔に失ってしまったものだから。
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