そう、悪い夢は食べちゃいます。
こんばんは。
体調はどうですか?
東京は今日この冬一番の寒さで、
ホームでの電車待ちの数分間も、小さく舌打ちをしたくなるほど。
ネックウォーマーをずりあげる癖を繰り返しながら、
何とか家について、お仕事の宿題の合間にこうして手紙を書いています。
今夜は、僕が文章を書き始めたときのお話しを。
あの日、僕はだらしない眠りから覚めて、
ボンヤリとカーテンの間から空を見ました。
空はにぶく薄暗くて、
時計の針が指していた時刻は4時過ぎ。
そのとき思ったのは、
今は午前4時なのか、午後4時なのかってことでした。
それから、どちらでもいいか、と思って、
もう一度眠りにつこうとしたのです。
でも、なんだか気持ちが悪くって、
ヨタヨタと体を起こして、
考えたんです。
1年に片手で数えられるくらいしか
休みのなかった部活を引退して、
いくらか時間のたった秋の初め。
何をしていいのかわからないまま過ぎていく毎日の真っ只中で、
バスケを失ってから心にひっかかる何かが、
僕に次の何かをさせてくれないことには気づいていました。
でも、それはいくら見つめてもうまく形にはならなくて、
小さな苛立ちを感じた後、いつもふて腐れるように眠り続けていたんです。
ところがあの日、まだスイッチの切り替わらないまま机に座って、
とにかくこのモヤモヤを何とかしないと、と心に決めて。
そこにあったからという以外には理由はないけれど、
僕は紙とペンを手にとって、適当に文字を書き始めたんです。
引退の試合。
すぐそこの先生の大声も聞こえないほど、
声援と、鳴り物の音と、審判の笛の音で飽和したコートで、
エンドラインから相手を一人交わして、シュートモーションに入って、
死角から飛び込んできた誰かにファールを受けて。
そうしてもらったフリースロー2本。
それを打ち終えるまでの馬鹿みたいに長い数秒間に感じた、
「ここでバスケを辞めよう」という気持ち。
13歳からの6年間、それなりに精一杯打ち込んできた時間が、
このフリースローのためにあったんだっていう、
笑い出してしまうような満足感と、当たり前の寂しさと。
今なら、こんなに簡単に書けるのに、
一つ一つ何かを確かめるように何時間も白い紙を文字で汚し続けて。
それで初めて、僕は自分が何を考えていたかを掴んだ気がしたんです。
とはいえ、そこに大きな喜びがあったわけではなくてね。
母の「ご飯よ」の声で、
僕はさっきみた時計の時刻が午後4時だったと知って、
お腹いっぱいカレーだか、ギョウザだかを食べてまた寝たんです。
グーグーと。
それから数年が経って、僕は2万円くらいのお金を持って、
1ヶ月の東南アジア旅行へ出かけて、
独り言以外日本語禁止な状況に身をおいて、
ふいに日本語の響きの気持ちよさに気が付いて、
どうしようもなく本が読みたくなったんです。
どれくらいかって、どこかの安宿からかっぱらってしまった
「地球の歩き方」を全ページ10回以上も読んでしまったくらい。
日本に帰ってからは、食費を月3000円まで削って、
本屋さんの文庫本を端から買って、1日で1冊を読み終える毎日で。
で、何かのタイミングでね。
自分だったら、こう書くのに、思っていてさ。
それでもって「あっ」と。
そういえば、あの日書いたな、と思い出して。
「書きたい」と。
んー、オチがない。。
無理やりつけるなら、バスケがしたい、かな(笑)。
なんだか、今日は文章が軽い。
でも、何事にもドラマチックな始まりがあるわけじゃないし。
時々はこんな他愛のない会話みたいな、
隣に座って話しかけるような手紙もいいかなと。
そろそろ宿題に戻ります。
ハッカの香りのするキャンディーの力を借りて、
早く元気になってください。
でもこれ、やっぱりちょっと大きいね(笑)。
おやすみなさい。
イベリアに温かい夜と朝がありますように。
それではまた明日、このフロアで。
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