これと言った理由もなく手に取った初見の作家さんの本。
たぶん書店のポップに何かを感じたのだろうけれど、
何を書いてあったかは覚えていません。
読み始めてみて、少し戸惑いました。
主人公は高校生の女の子。
思い返してみれば、そんな本は読んだことはなくて、
どうにもストーリーに入りきれない。
けれど、本全体の中心になっている「ドラえもん」の道具。
これは章の名前にもなっているのですが、
それが2つ目、3つ目となるうちに、ページをめくらずには
いられなくなりました。
辻村深月さんの『凍りのくじら』は、
孤独な女の子の日々を綴った物語です。
傷を背負って、過去を抱いて、自分はいつもこの世界で不在だと。
そんな風に感じる彼女は、どうしようもない別れと、
不思議な少年との出会いの末に、
そして自分が眺めるだけで触れ合おうとしなかった時間が
唐突に答えを求めてきたその時に、
ある奇跡と出会います。
エピローグにいたるまで、
ひたすら不安定な空気感を漂わせるこの物語に
待っているのは、凍りのようなさらなる孤独か、
それとも日の光に照らされた温かな温度か。
今朝、電車の中で久しぶりに涙を我慢しました。
少し長い作品だけれど、よい本です。
機会があったら、手に取ってみてください。
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