今年読んだ中でも色々と考えさせられた本がこれ。
第二次世界大戦で参謀本部に身を置き、
あの絶望へ向かう戦いの方向性を決めた天才参謀・瀬島龍三。
この男の話をする前に、戦後、インドネシアを相手に戦後賠償ビジネスというものが動いていたことがまず驚きでした。
このビジネスは戦争責任として賠償金を払うのではなく、スカルノ元大統領から発注を受け、日本企業がインドネシアのために何らかの事業をし、その支払いを日本国が行うというもの。
簡単に言ってしまえば戦後賠償金の現物支給。
このビジネスを請け負った会社は、日本国と言う絶対に代金を踏み倒さない相手と巨大な規模の仕事ができるため、伊藤忠をはじめとする商社が、スカルノへの莫大な賄賂をはじめ、あらゆる動きを水面下で行います。
ここで圧倒的な働きをするのが瀬島です。
彼は、戦争責任者の筆頭と言えるにもかかわらず、
様々な人脈の影響を受け、シベリア抑留中にも厳しい労働は課せられず、
あっという間に華やかなビジネスの舞台に躍り出るのです。
日本に自衛隊が設立されることになった時、
そのトップ人事の候補が、ほとんど元日本陸軍参謀室だったこと。
その選出から漏れ、「貴様は俺を誰だと思っている」と
当たり前のように怒りの声をあげる恥を知らない男、男、男。
本当に"エラい"官僚クラスの人間は、今も昔も責任を取らなくてよい、
という日本の文化がとてもよくわかるとともに、
どうしようもなく悔しく思います。
たくさんの戦没者の方々は、彼らの作戦が、机上の仮説が、
正しいかどうか試すだけのために死んだはずではないのに。
玉音放送を聞いた後で、茫然自失とするボロ布の様な人々を
高見から見ながら、瀬島たちはどんな金を稼ごうと思ったのか。
共同通信社の恐ろしいほどの労力が一冊の本に描いた、
瀬島と言う男と、日本の戦後の闇。
伝説的な一人の男の人生として、とてもエキサイティングなのは確かですが、
これは僕ら庶民が持つ当たり前の怒りが昇華した物語です。
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