今年読んだ中で、読み終えたその後、
全身の力が抜けてしまった、ただ一冊の本。
それがこれ。
とある小学校。学期終わりの教室。
普通であれば、通知表の評価に一喜一憂し、
これから始まる休日の日々に思いを馳せる子供たちがいる場所。
そこでしかし、先生は言うのです。
ここにいる、私の娘を殺した人間を許すことはできない、と。
ある日、この女教師の娘は、
校舎内のプールで遺体となって見つかります。
当初は事故として処理されながら、
しかし実はこれが殺人だとわかる。
この殺人に関わった怯え、戸惑い、それでも無表情を装う子供たちと、
彼らにこの日、ある一言で死に至るような呪いをかける女教師。
子供の無念を晴らすことが悪意だとするならば、
この本の中に書かれているのは、登場人物たちそれぞれが孕む悪意だけです。
そして、誰もが小さいものであれば必ず持つ悪意が
最大限の力を発揮すると、これほどの悲劇を生むのかと、
体が震えてしまいました。
これを不運とは呼べないほどに、恐ろしい物語です。
来年、この女教師を松たか子さんが演じて、
映画が上映されます。
良い人のイメージがいつも漂う彼女が、
どんな風に演じるのか楽しみ。
作者の湊かなえさんは、人間が秘める怖さを、
しっかりと見つめる勇気と、
それを表現する揺るぎない技術を持っています。
恐ろしいけれど、
最後の1ページまでページをめくる手が止まることはありません.
どうか読んでみてください。
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