先日のクリ君のブログを読んでいて思い出した「名誉白人」という言葉。
アパルトヘイト下の南アフリカ共和国では、
人種の違う男女が恋愛をするだけで罰せられるほど、
あからさまな人種差別が国を挙げて行われていました。
学校別、ホテル別、買い物レジ別、トイレ別、ビーチ別。
白人であるかどうかで、世界は全く違って見えたはず。
このアパルトヘイトの特徴は、基本的に白人か、そうでないか、
という2つのランクしかない事です。
中間がない。
でも、その中で唯一の例外と言ってよかったのが、
「名誉白人」だった日本人でした。
理由はお金持ちだから。
劣悪な生活を送っているブラックやカラードの人たちを横目に、
たくさんの日本人はねじれた優越感に浸っていたようです。
ホテルやレストランに入る時には
追い出されない様に必ず「I'm Japanese」と言っていたのだとか。
あきれるほどに恥ずかしい光景。
もし自分がそういう環境に置かれたら、
それを悪と感じられたかどうかは自身がありません。
と、いうのも初めて海外旅行でアメリカに行った時に、
ある人に「Are you Chinese?」と聞かれたんですね。
その時に自分は怒りを覚えてしまったんです。
いいえ、違います。日本人です。
と、それだけ答えればいいのに、中国人?と聞かれた事が
とても恥ずかしかった。
ずいぶん後になって、自分は日本人が他のアジア人よりも
優れていると思い込んでいたと気づきました。
ある人から「世界で一番頭のいい人種は日本人で、
その次はゲルマン人だよ」と教えられていた事も
大きかったかもしれません。
それがナチスと軍国主義の日本との関連性からじゃなく、
当時日本が世界トップのビジネス力を誇っていて、
ドイツも優れた自動車を始め、優れた製品を多く輸出していたことを
背景にしていたとしても、かなり偏った考え。
この言葉を頭から追い出すのも、かなり苦労しました。
そして、知ったのは、
僕らはどうやらナショナリズムが大好物で、
ほめられた事は、それが他の人々を蹴落とす考え方でも
受け入れてしまう事が多いということ。
自分の生まれた国に誇りを持つ事はすばらしいです。
伝統と文化と生活と家族のある場所。
戦争に敗れて母国が地図から消えた人々は、
自分たちを何人と呼んでよいかわからず、
生まれたばかりの国は愛国心を根付かせるのに
毎年何億円もの税金を使ってテレビCMを流します。
それを必要とせず、自分の国に愛情を感じられる
成熟した国は、実はそれほど多くないから。
でも、ちょっと考えてみるのも必要かな、と最近思います。
学校で国歌斉唱と国旗掲揚の是非が問われながら、
国立球技場では、何万の人が日の丸を掲げていること。
横綱の安易な行動を、国技を汚したとバッシングしながら、
新弟子の数が毎年確実にゼロに近づいているニュースを
僕を含めて大半の人たちが気にも留めていない事。
中国からの輸入品に問題があると怒る事は正しいけれど、
同時に日本人は彼らに、彼らの夕食より高い値段のドックフードを
毎日手作業で作らせている事。
そこに矛盾はないか?
その問題について話す前に、棚に上げている事柄はないか?
決してニュースに責任を取らないメディアに踊らされていないか?
最後に、名誉白人の話に戻ります。
この言葉を僕に教えた中学校の先生は、
この事実を日本人の恥だと断言しました。
けれど、色々な人に聞いてみると、
「こんなに厳しい差別があったのに、日本人だけは
優遇してもらっていたんだよ。すごいね」
と教わった人も少なくないようです。
とても難しい問題で、頭を抱えてしまうけれど、
それでもお互いに怒りを拳に込めてしまうよりは、
少しましかと、そんな風に思ってしまうのです。
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